てけてってって♪
 てけてってって♪
 てけってってってててて♪

「はいはいみなさんラルファクイルファッシーナ♪ 毎度おなじみ八神はやてですー」
「アシスタントのリィンです、ラルファクイルファッシーナ……ってこれどこの国の挨拶ですかマイスター」

 はやてさんのお料理メモ「クロフェイえろえろクッキング」

        かいたひと:ことり




 ばたばたばたばたばた。

「……なんか今日はスタジオ内が慌ただしいですね」
「あー、気にせんといて。仕入れた材料の関係上、ちょおADさん達に負担がかかってしもうてな」
「何を仕入れてきたのか非常に気になりますが」
「まぁ材料の前に今日の献立の紹介やな。リィン、プラカード持ってきてな」
「あ、はぁい」
「今日こそは一人で持ってこれるとええなぁ」
「う、へ、平気ですもんっ!」
「あーほらほら、走ったらあかんて……ほれこけた。まぁ戻ってくる前に軽く今日の献立について紹介しよか。
 ADさん、モニタつけたって……って誰も手あいてへんのかい。しゃあないな……」

 ぱっ

「えー、今日の献立はこちら、『恵方巻き』やな。知らん人もおるかもしれんさかい、軽く起源について説明しよか。
 恵方巻きいうんは節分の夜に恵方……その年の最もよい方角を向いて食べる巻き寿司のことや。
 ちなみに2008年の恵方は南南東。なにやら陰陽道にもとづいて決めるそうやけど、そのへんはよーわかりません。
 で、節分の夜に恵方を向いて巻き寿司を無言のまままるかぶりすると、その年の災難を逃れることが出来るっていう、民間行事の一つなんよ。
 起源は江戸時代末期に商売繁盛の祈願事として始まったとされる説が有力やな。
 戦後に一旦廃れるんやけど、1977年に大阪海苔問屋協同組合が節分の日に道頓堀で実施してまた広まっていったらしいで。
 ぶっちゃけばれんたいんでーと大差あらへんってことやな」
「ま、まいすたぁ〜」
「お、リィンお帰り……て、なんやそのカッコ」
「持てなくて困ってたら、ADさんが背中に縛り付けてくださって……で、でもちゃんと一人で持ってきましたよ!」
「うんうんよしよし。次は助けなしで頑張ってみよなー」
「はううう」
「始めた頃の恵方巻きの材料はとってもシンプルや。高野豆腐とかんぴょうを巻いただけ。とはいっても当時海苔や白米は貴重品。
 それに高野山とかけて高野豆腐、かんぴょうで大津のかんぴょう神社にあやかろうという、堂々とした縁起物やったんや。
 ま、最近コンビニとかで売ってる恵方巻きはもうちぃと豪華になっとるけどな。」
「ここ数年で知名度がばーんと上がりましたよね。それでも知らない人は結構いるみたいですけど」
「販売戦略、ちぅ奴やな。マスコミが食いつけば勝ったも同然やから」
「売るほうも生活かかってますね」
「縁起物で腹が膨れるなら万々歳やないか」
「夢や希望もお金で買えるようになったってことですか」
「商売繁盛で何より。というとこで今日作る恵方巻きの材料や。リィン、後ろ向きー」
「はう。わ、た、たたっ」
「うん、OKOK。そのまましっかり立っておくんやで」
「ど、努力しますぅ……」
「具材のほうは無難やね。コンクリ打ちっぱなしの地下室、固定金具一式、ナイロンロープ少々……」
「なんでまた地下室なんて」
「よくわからへんけど、そのほうがふいんきが出るって事とちゃう?」
「マイスター、雰囲気ぐらい変換してください」
「あとはまぁ普通やな。ハンドタオルに黒のストッキング、ボールギャグと綿棒」
「ご家庭でも揃えられるものばかりですね」
「ただ、今回は酢飯と海苔に気合入っとってな。滅多にお目にかかれんものを用意してもろたんよ」
「へえ、そんなに珍しいものなんですか」
「そやよ。じゃちょっとリィン、第2モニターのスイッチ入れたって」
「あ、はぁい。はわ!? わ、わひゃっ!?」
「……あー、しゃーない、自分で入れるわ……」
「ほ、ほにょ前に、起こひてってくらひゃい〜〜〜」

 〜CM〜

「はわー……死ぬかと思いました」
「ほれ、モニタ見たって。もうはじまっとるで」
「ほえ? あらー……これはまたずいぶん豪勢な酢飯と海苔ですね」
「まったくやな。酢飯には時空管理局提督、次元空間航行艦船アースラ艦長。海苔には同局執務官を使用。
 どちらもハラオウン産、産地直送の活きのいいやつやで」
「確かにこれは滅多に見られませんね」
「どっちも多忙を極める身やからな。今回無理を言って用意してもろたんよ」
「じゃあ、さっきからADの皆さん方が右往左往してるのって」
「もちろん二人分の仕事を代わりに処理してもろてるからや」
「十数人がかりでですか……どんな仕事量なんだか」
「地下室にした理由は密閉空間に出来るからなんや。せやから現場からは映像で送ってもろてるんよ」
「偉い人って色々面倒なんですね」
「そのへんはまぁごにょごにょ。ほれ、もう仕込みにはいっとるみたいやで」
「ああ、もう提督は綺麗に剥かれてますね。拘束具使って壁に貼り付けられちゃって」
「下ごしらえをしっかりしとかんと後味が悪くなるよってな、ここで手を抜いたらあかんのや」
「執務官は提督の前でしゃがみこんで何してるんでしょう? ちょっとカメラの角度悪くて見えないです」
「んー、そやね、ちょっとカメラ変更しよか。ぽちっとな」

 ぱっ

「あー、両手と舌を使って丹念に洗ってるんですね。うっとりと目を細めちゃってるんですけど執務官」
「それだけ集中してるってことやろ。提督の方はしっかり壁に貼り付けたらボールギャグで口をふさぐのも忘れずにな」
「さっきからうーうーうるさいのはそれですか。涎までだらだら流して辛そうなんですけど」
「ああ見えて内心は喜んどるんとちゃうかな」
「そういう趣味なんですか」
「辛いと幸せって字は似てるやろ」
「ああ、びくんびくんって脈打ってますね。そろそろ出来上がる頃ですか?」
「いんやまだまだ。ここで我慢しとくとアクが抜けて美味しくなるんよ」
「始まってから1時間ぐらい経ってるみたいなんですけど」
「提督は忍耐にかけては右に出るものはおらへんからな」
「それ苦労性っていうんじゃ」
「そっとしといたるのが大人ってもんや。ていうかひたすら洗っとる執務官のほうが我慢の限界っぽいけどな」
「肌も赤みが差してすっかり茹で上がった状態ですもんね。ほとんど意識もない状態で舐め続けてるんですか」
「ここまできたらそろそろ綿棒の出番やな。もうちょいカメラズームしよか」
「え、うわ。そんなトコに入れちゃうんですか。呻き声が一段高くなりましたよ」
「しっかり開発してあるから平気らしいで。前立腺に刺激を与えすぎないように優しく動かすのがコツや」
「生殺しもここまでくると芸術ですね」
「手間ヒマかけた分だけ仕上がりに出てくるからな。具の仕込が終わったら酢飯を海苔で包むんやけど、巻き方が悪いと全部台無しやから、しっかりと愛情込めるんが大切や」
「あー、両手で根元をしっかり押さえてから吸い込むようにするんですね」
「ちとカメラじゃ見えへんけど、舌で巻きつけるようにまんべんなく刺激を与えとるんよ」
「このあたり慣れというか呼吸というか。経験って大事なんですね」
「夢中になって後ろの綿棒のほうも忘れんようにな」
「あ、提督が痙攣してきましたね。そろそろ出来上がりっぽいです」
「ここで体の自由を奪っておかんと、調子に乗って自分で動かしよるからな。最初にしっかり拘束しておくんやで」
「あ、跳ねた……執務官の喉がこくんこくんって動いてますよ。直に飲んでるんですか」
「味のほうはまだ我慢できるけど、喉越しが最悪やからなぁ。愛がないとようできへんよ、あれは」
「それでも飲みきれない分が垂れてますね。提督出しすぎ」
「さんざ焦らした後やからな。しかも妹の口でとか、どんだけ外道なんかと」
「でも終わったのかな。吸いながらゆっくり離れていきましたね」
「根元のほうから搾り出すように唇の端で押さえながら引き抜くんや。一滴も残したらあかんねんで」
「あーあーむせてる。キツいなら無理しなくていいのに」
「そんでも見てみい、あの幸せそうな顔。なんやもう石でも投げたろか」
「視聴者から抗議メールがきますからやめてください」
「最後はギャグをはずして感想を聞くとかすると羞恥心を煽れていい感じになるさかい、ツメをしくじらんようにな」
「抱きついてキスをせがんでるように見えますけど、なぜか提督嫌がってませんか」
「そりゃ誰しも自分のは嫌なもんやろ」
「ご愁傷様です」
「んじゃCMのあとは試食タイムやでー」

 〜CM〜

「お茶どうぞマイスター。だけど出来上がるまでは結構時間かかるものなんですね」
「材料の選択と、味付けにちょお手間のかかるもんを選んだせいやな。ご家庭で手軽に作る場合は番組終了後に30秒でできる調理法を紹介すんで、そちらを試してみてな。」
「30秒っていうのもそれはそれで問題ありそうな」
「人によってはトラウマになるらしいけどな。とりあえずモニタ見てみようか。モノが恵方巻きってことなんで、味見を兼ねて食べ方の実演や」
「提督は拘束やっと解かれたんですか。あ、執務官も着替えてる……っていうか脱がされてますね。ロープで縛られてますけど、動くのに問題なさそうに見えるんですけど」
「縄化粧って奴やな。胸を強調する縛り方を心得とるあたり、提督のシュミが伺えるってもんや」
「ストッキングははいたままっていうのがまたマニアックですね」
「そんじゃ食べ方のおさらいや。日付は節分の夜――収録ってことで節分にって訳にはいかんけどそこはまず勘弁。
 巻き寿司やけどこれを切らずに一人一本、丸のまままるかぶりする。切り分けると縁を切るって事になるらしいで」
「それで恵方……2008年は南南東ですか。そちらの方角を向いて食べる、と。執務官が手をついた壁の方ですね」
「ん、そんで重要なのは無言のまま食べ終わること。話すとツキが逃げるさかいな」
「ああ、執務官がハンドタオルで猿轡されてるのはそのためですか」
「待ちきれんって表情やなー。誘ってる腰つきがなんとも」
「結構な太巻きなんですけど、そのまま端から食べるんですか。あ、一気に行った」
「提督も我慢の限界やったんやろ。まぁあれだけ挑発されたら理性も吹っ飛ぶやろうけど」
「涙目ですもん」
「繰り返すけど食べ終わるまでは無言でな。食べること自体に無病息災の意味合いもあるけど、その間に願い事をすると叶うって言い伝えもあるんやで」
「タオルかみ締めて必死に声殺してますね。さすがに堪えきれないみたいですけど、あれぐらいはいいんですか」
「息をするなとはいわれとらんから、吐息のレベルならセーフやろ。提督も手ぇ抜いたったらええのにな」
「無理じゃないですかね、目が血走ってますよ」
「ケダモノってのはああいうのを言うんやな」
「あ、動きが早くなってきた。もう少しで食べ終わりそうですね」
「4分か。まぁよく持ったってことにしといてやろか」
「あー出してる出してる。2回目なのによくあれだけ出せますね」
「なんでもそうやけど、食べ物には敬意を持って、米の一粒も残したらあかんでー。お百姓さんに失礼やからな」
「いつの時代の人ですか」
「とまぁ、息つく間もなくそのまま第二ラウンドに入ったあたりでそろそろ時間やね」
「はいっ、今日は日本の民間行事に欠かせない『恵方巻き』のご紹介でした!」
「テレビの前の皆さんの願い事も叶うとええなー。ほなまた」
「提供は皆様の食卓と平和を維持する、時空管理局第6課でお送りしましたぁ」


「マイスター、提督と執務官の願い事ってなんでしょうかね」
「願い事は他人に知られると叶わんっていうから、そっとしといたり。ほれ、カギかけたら撤収するで」
「はぁい」



 扉を閉める鍵音。



 地下からはいまだ低く声が漏れて。





           fin.

 







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