そのころ、私はまだ、小さかったから。
 慣れたつもりではいたけど、やっぱり、寂しかったんだと思う。
 それが悪いことかどうかなんて、どうでも良かった。
 最初のときはやっぱり泣いたけど。
 それが私の隙間を埋めてくれる気がして。
 何度も繰り返し繰り返し、私は溺れていった。


 ちゅく、ちゅくと、指を動かすたびに水音がする。
 潤みきったそこはあとからあとからいやらしい液体を吐き出し、
 嫌でも自分が興奮してることを自覚してしまう。
 口の端からつう、と一筋、雫が流れたけど、そんなものを気にしている暇はない。
 きっと今、私はだらしない顔をしているんだろう。
 でも、そんなことも気にならないぐらい、私は目の前の光景に魅入っていた。

「ひ、きゃああぁ……た、たす……たすけて、ぇ……はやてちゃん……はやてちゃん……」
 可愛らしい声で、私に助けを求めてくるなのは。
 手足は固定金具に通して、床にくくりつけた。
 高く上げたお尻を左右に振って、なんとか逃げようともがいている。
 涙と鼻水で顔はぐしゃぐしゃで、綺麗な顔が台無しだ。
 感じてる様子なんて微塵もない。ただただ、汚されるだけの彼女。
「ああ、ええよ、なのはちゃん……もっと鳴いて……?」
 絶望の色を濃くして、なのはがこちらを見る。
 憎んでいるだろうか。裏切られて哀しいのだろうか。
 彼女の気持ちを想うたび、背筋をぞくぞくと快感が走りぬけ、あまりの興奮に一筋、涙がこぼれ落ちた。
 ソファの上で軍服のまま、はしたなく股を開く私の前で。

 なのはは、豚に犯されていた。

挿絵


 

「なのはと愉快なご主人様たち」

    二日目 「夜天の性癖」

 


 口に布をかまされて、叫ぶことも許されず、私はずっと泣いていた。
 体の真ん中を貫く痛みはそれこそ気も狂わんばかりで、いっそ殺してくれと本気で思った。
 抵抗しようとしても両手は抑えられ、動かそうとするだけ自分がさらにみじめに思えた。
 乱暴に腰を突かれて、心臓が飛び出しそうだったけど、気絶することすら許してもらえなくて。
 お腹の奥が熱くなるたび、妙な気持ちになったのを覚えている。
 永遠にも思えるような長い長い時間の後、ぼろぞうきんのようになって、遠い喧騒をどこか別世界のように思い、路地にたった一人で横たわっていた。

 それから私の生活は、歯車が狂ってしまったかのように変わってしまった。
 体の痣が消えるほどの時間がたっても、心は忘れてくれず。
 人と関わることが何よりも恐ろしくて。
 なのに、あの時のことを思うと、嫌で嫌で仕方なかったはずなのに、体の芯が火照り、何度も何度も自分を慰めた。
 でも、指を入れたぐらいじゃ満足できなくて。
 淫核を千切れるぐらいにひねり上げても全然足りなくて。
 何度も何度もイっても、火照りは引くどころか加速していくばかりだった。

 おかしくなりそうな日々の中で、ある日、知らないおじさんに話しかけられた。
 言ってることの十分の一もよくわからなかったけれど、なぜかそのときの私はその人についていってしまった。
 連れて行かれた先は古いビルの小さな一室で、男の人が何人もそこにいた。
 机も椅子も、家具の一切ない部屋の中で、扉の閉まる音を聞いた後、私の体は車椅子から引き剥がされた。
 奇妙な笑みを浮かべて近寄ってくる人たちを心の底から怖いと思うと同時に、お腹の奥がじわ、と熱くなるのを自覚して、なんとなく理解した。

 ああ、これがほしかったのか、と。

 


「ん、く、はぁ……もっと、もっと突いて……!」
 艶のある声を撒きながら、腰をうねらせる。
 中に入ってるモノの感触を楽しむように、2・3度前後に動かす。
 タイトスカートをたくし上げ、ストッキングを破り、下着をずらしただけで男に跨っている。
 素性は知らない。その辺で声をかけただけの関係。
 コトがすめば、顔すら覚えていないであろう。
 小さくうめく声を聞いて、はやての瞳が妖しく揺らめく。
「なんや、もう出てまうのん……? ええよ、そのかわりいっぱい出して……」
 その言葉が引き金になったのか、男の腰が数度跳ねる。
 下半身から上ってくる熱を感じて、はやては顔に喜悦の色を浮かべた。
「あ……あ……あ♪」
 ふるふると震える体を両手で抱きしめて、余韻を楽しんだ後、名残を惜しむ風もなくゆっくりと立ち上がる。
 太腿を流れ落ちる名も知らぬ男の精を指ですくい上げ、粘度を確かめるように指で何度か弄ぶ。
 くち、くちと音を楽しんで、口元をほころばせる。
 うっすらと目を細めたあと、もったいないとばかりに舌の上へ運んだ。

「ひ……ぎっ、嫌……嫌ぁ……」
 いつしか豚は腰の動きを止めていた。
 しかし息は荒いままで、なのはの余りに小さい体を覆いつくさんばかりにのしかかっている。
 苦しげに浅い呼吸を繰り返すなのはのあごに手をやり、持ち上げる。
 いつもの優しい、しかしどこか色を含んだ表情で、はやては語りかける。
「ふふ、なのはちゃん、苦しい?
 豚のペニスって細くて、気持ちええトコをこすってはくれないんよ。
 そのかわりすっごく長くて、子宮の入り口に先っぽを引っ掛けて、そのまま射精するねん。……最低30分は続くんやで?」
 豚の交尾について説明するが、なのはに聞く余裕など一切ない。
 ただ、どぷどぷと注がれる気持ち悪さから、一刻も早く開放して欲しい、それだけだった。

 ふと背中の気配に気づき、はやてが振り返る。先ほどの男が覗き込んでいた。
 豚に犯される美少女に興奮したのか、一度出したにも関わらず股間は大きく反り返り、獲物を前にした蛇のように脈動を繰り返している。
「んー? なんや、こんなん見て興奮したんか?……最低やな」
 そういって、屹立した肉棒を指ではじく。情けない声を上げながら、男は一歩下がった。
 そんな様子を見て、薄く笑みを浮かべたはやては膝を突き、身をかがめて両手を床へ突く。
 綺麗に整った尻を男へと突き出し、片手を添えて尻肉をいっぱいに広げた。
「しゃあないから、入れさせたるわ……でも、そんなド変態はこっちで十分、やろ?」
 誘う素振りを見せながら、彼女が指を添えたのは、未だに残滓を垂れ流す場所のはるか上。

挿絵

 ごくりと唾を飲み、視線に導かれるように、男ははやての腰をつかむ。
 いきりたった欲望の象徴をぱくぱくと妖しげにひくつく穴に添え、遠慮もなく力を込めて割り進んでいった。
「あ……うあ、ああぁ……は、はいって……はいって、くるぅ……」
 はくはくと酸素を求め、はやての顎が動き、苦しげに、しかし嬉しそうに被虐の喜びに打ち震える。
 ゆっくりと、しかし確かな存在感を持って、内部を割り進む異物。
 なすすべもなく、無力な姿をさらけ出し、這いつくばってただ貪られる。
 声はただ甘く蕩け、いっぱいに快楽を訴えるけども、それはまるで悲しみを奏でるように聞こえて。
 喜びに満ちた悲しみを、はやては歌い続けた。

 

 乾いた音が響く中で、向かい合わせに犯される二人の美少女は、全く逆の表情を浮かべている。
 名も知れぬ男に尻穴を突かれ、涎を垂らしながら喜ぶはやて。
 人ですらない存在に自分の中心を支配され、注がれる絶望に涙するなのは。
 快楽にあげる甘い声と悲痛に泣き叫ぶ悲鳴とが、耳の奥の鼓膜を揺さぶって、いっそうの興奮を呼び覚ます。
「あ、は……なのはちゃん、辛いんやね……?」
 ず、ずと背骨ごと引き抜かれそうな愉悦を楽しみながら、
 はやてはなのはの涙の意味が変わってきたことに気づいた。
 がちがちと歯を震わせ、必死で耐えるなのはの涙をぺろ、と舐め取る。
「ほら、正直にいうてみぃ……? 『イかせてください』って……」
 ぶるぶると頭を振り、苦しみに歪んだ顔で、はやてに哀願する。
「た……足りないのお……これじゃ……イけなくて……辛いのお……」
 その言葉だけで、全身が総毛立つ。
 軽く達するほどの衝動をなんとか抑え、どうしてほしい?と問いかける。
「イ……イかせて……滅茶苦茶に突いて……気持ちよく、してえ……」
 ああ、なんて可愛いんだろう――心から愛しく思う、私の親友。かけがえのない、大事な人。
 近づけた唇を、どちらからともなく絡ませあう。
 つ、と糸を引きつつ顔を離した後、はやては言う。

「だぁめ」


 豚の射精はまだ続く。
 どこまでも深い絶望の淵に落とされながら、なのははイかせてくださいと叫び続けた。


 許しなど来ないと知りながら。

 

 


 ハーブティーの香り。
 金具の跡を気にしながら、真っ赤に泣き腫らした目をこすり、はやてのお茶を飲む。
 またお気に入りの店を見つけたとかで、最近よくご馳走してくれるのだ。
「あはは、堪忍なー、なのはちゃん。うち、スイッチ入るとどうにもならんさかい」
 さきほどの暗い影を取り払って、いつものはやてが申し訳なさそうに言う。
 落ち着きは取り戻したものの、豚の精液はなのはのお腹から出ず、ぽこんと膨らんでいた。
「うう……気持ち悪い……これ、どうすればいいの?」
 ぽりぽりと頬を掻きつつ、はやてが説明を始める。
「あー……豚って最初は水みたいに薄いのを出すんやけど、初めのは精液、ちゅうか先走り、みたいなもんなんやって。
 それでお腹の中を満たしたら、だんだん濃い奴を出すねん。そんで一番最後に、それまで出した分が出えへんように、ゼリー状の特に濃い奴で蓋するんよ。溶けるまではちょっと……かかるなぁ」
 ではしばらくこのままなのか。動くたびにたぽん、たぽんと揺れ、どうにも意識されて仕方がない。
 責めるような視線を向けるなのはに、はやては慌てて話し出す。
「あああ、怒らんといてえな、なのはちゃん。そや、また今度、ご飯作りにくるよってに」
 う、となのはが固まる。
 異国の地でロクに外へも出れず、一日中部屋の中にいるなのはには、はやてがたまに作ってくれる日本料理が何よりの楽しみなのだ。
「うー……何作ってくれるの?」
「カツ丼」
「絶対嫌」
 光よりも早く即答する。
「あははは、冗談や、冗談……なのはちゃんの好きな奴、なんでも作ったげる。
 だから、な、堪忍しといて?」
 平身低頭で謝り続けるはやての姿に辟易し、ため息をつくなのは。
 根は悪い子ではないのはよくわかっている。……悪気はあったのだろうが。
 なによりはやては、大事な友達だ。
「う゛」
 突然に、下腹部に異常を覚える。
 慌てて目をやると、とろ、と白いものが流れ出していた。
「あれれ?もう出てきよったん?大抵10時間は出てきいへんかったんやけど……栓しそこなったんかいな?」
 目を丸くするはやてに、何か違和感を覚え、問いただしてみる。
「……はやてちゃん、なんでそんなに詳しいの?」
 一瞬の沈黙の後、バツが悪そうに答えるはやて。
「いや、その……なんちゅうか、経験者は語る、ちゅー奴?」
「……はやてちゃんの変態」
 やっぱりこの子はわからない。
 あとからあとから溢れてくる濁液を必死で処理していると、すぐ近くにはやての息を感じた。
 いつの間に近寄ったのか、にじり寄るような姿勢でにこ、と笑いかける。
「んでまぁ……罪滅ぼしもかねて、おねーさんが全部綺麗にしたげるさかい、ちょっと動かんといてな?」
 言われたことを理解するよりも早く、はやてがなのはの股間に顔をうずめる。
 ぞろ、とした感触を覚え、鳥肌が立つ。
「え、え、あの、はやてちゃん!?」
 逃げようとしても腰をつかまれ、動くこともままならない。
「ん〜……ず、ずず……んく、ん……」
「はやてちゃんのどへんたい〜〜〜〜〜〜!!!」

 過去は決して変えることができず、人は未来に向かって歩くことしかできない。
 癒せない傷跡ならば、いっそえぐってしまえ、とはやては思う。
 汚れても汚れても消えることのない輝きを、人は持っているのだから。




 しあわせに、なれるはずだから。







     To be next day...

 







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